自作PC炎上記

先週の日曜に注文したPCパーツが木曜くらいに全部揃ったのでPCを自作することにした。
買った品々は

メモリ どっかのメモリ4GB * 2
グラボ SAPPHIRE HD6670 1G GDDR5 PCI-E HDMI/DVI-I/DP(RADEON HD 6670)
マザボ ASUS M4A88TD-V EVO/USB3
CPU Intel Core i5 2500K BOX
電源 玄人志向 KRPW-P630W/85+
SSD Intelの128GBのやつ(以前から使ってたPCの引継ぎ))
しめて4万5千円くらい。SSDとOSとケースがないとかなり安くすむ。

木曜の夜、仕事も終わり自作PCを組み立てることしか頭にない私はウキウキしながら部屋に帰り、さっそくAmazonダンボール箱からマザーボードを取り出した。
「痛っ」
これが私の自作PC人生における第一声だった。
とりあえずCPUからつけていこう。
素人ほど説明書を読まないというのはよくある。私もその一人。きっとPCの自作には向いていないんだろう。

CPUをセットして金具で固定、ものすごいユルユル。斜めにしたら普通に転がり落ちるレベル。最近のPCはこんな適当に取り付けても動くのか、技術の進歩は目覚しい。

そこまで馬鹿じゃないので早速説明書を手に取り読んでみると、なんとこのマザボのCPUスロットはAM3という規格らしくAMDのCPUしか刺さらないらしい。

ツイッターでこの出来事を泣きながら書き込んでいたら優しい @dolpenくんがLGA1155のマザボ(ASRock H61M-GE)をくれるというので、日を改めてマザボ交換会をした。世の中にはいい人がいるものだ。

これで組み立てられるようになったので今日の昼過ぎからさっそく続きを始めた。
なんとか無事パーツの取り付けが終わり、粛々と点灯式をとりおこなう。

「パチッ…
 …」

くんかくんか、臭…い…?
小さい頃はいろんなモノを燃やすことに興味を持ち、ペットボトルやビニール袋なども例外なく燃やしてみたやんちゃ坊主。あの時に嗅いだような嫌な臭い。
そんな独特な臭いがすると思った瞬間、目の前にはもくもくと白い煙が立ち上がる。まるで魔法のランプをこすった時の煙のよう。

「はっ」と我にかえり、ただごとではないと気づいた私は電源をOFFにし、コンセントからプラグを抜いた。

ヤバい…その時頭の中に浮かんだのは「4万5千円…」
完全に終わった。

電源をつけただけで電源ユニットから煙が出てくるとかこのご時世ジョークでも流行らねーよと思いながら原因を探る。探る。自作PC初心者の自分には何が原因なのかわからなかったのでとりあえずもう一度つけた。今回は動いた。

「なーんだチョロイな」

と思ったらBIOSの設定画面が出てきた。不思議に思っていろいろチェックしてみたらSSDのに電気が通ってなかった。

焦るわーマジ焦る。初心者の心臓は弱いんだぞっ☆

などと心の中で思いつつ実際に声にも出しながら作業を続けた。
さて、SSDもちゃんと刺したし、もういっちょ電源入れてやりますかー!
ポチッ

ボッ…ボワァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!


今日は私の住んでいる地区のお祭りの日。公民館の付近では直前に迫った祭ばやしの練習や出店の準備で賑わっていた。夜になると家先の道路で花火をする子供たちがみえる。風流。

そんな花火のような光り輝く炎がマザーボードから出た。金属の冷たい感触、集積回路幾何学模様。それらがより一層火花を際立て、激しく燃え盛った。圧倒。
私はあまりの煙の量にむせた。息ができなかった。涙がこぼれた。むせたために流れた涙か、目の前の出来事に恐怖した涙か。

きっとそれは数秒の出来事だったに違いないが、私にはとても長く感じた。
我にかえった私は勢い余る火を消そうと息を吹きかけた。北風が旅人の服を脱がせようと必死になるくらいの強さだった。
しかしマザーボードから出る光は予想を超えるものだった。全く消えない。
完全に思考停止してしまった私はそこで思わず電源をぶち抜いた。すると今までそこにあった光は消え、マザーボードの上には集積回路やメモリが整然と並んでいた。光っていた場所だけは白く変わり、そこだけが何千年もの時空を超えたかのような姿になっていた。


先ほどまで元気に走り回っていたPCは、今はもうその影すら残っていない、BIOSすら立ちあがらない体に…
私はもう完全にこの自作プロジェクトを諦めていた。

とりあえず今生き残っているパーツの確認をしよう。そうして以前のマザボに取り付けられる部品をセットし動かしてみることにした。といっても取り付けられるのはグラボしかなかった。さっきまで元気に走り回っていたパーツの多くは、その役目を果たす前に息を引き取った。
PCパーツが届き胸踊らせていたあの時の自分はどこにいってしまったのか。輝く未来、無限の可能性に向かってひた走っていたあの頃の自分は。
今やパーツの生存確認に必死だ。


グラボくらいは…せめてグラボくらいは生き残っていてくれ!という思いで以前の環境に新しいグラボを付け、震えながら電源を入れる。決して武者ぷるいなんかではない、トラウマだ。

画面が光る。見覚えのあるロゴマークwindows7。立ちあがった。
今まで息をするのを忘れていたと思うくらい深い呼吸をした。安堵感。これが私の知っているPC。

安心してケースの蓋を閉じようとしたその時、気づいたらグラボに手を触れている自分がいた。
画面には見覚えのないエラー、グラボからは嗅ぎ覚えのある臭い。終わった。

私は新調した全てのパーツを見事に破壊しつくした。笑った。これ以上壊れるものはない。笑うしかなかった。

気づいたときには財布を持って秋葉原に向かおうとしていた自分がいた。時計を見ると20:30。
握っていた財布をポケットに入れ、ダイエーで半額弁当を買った。



続き 自作PC炎上記ファイナル


画面中央ちょい下、端の白くなっている部分がマザーボードの炎上した部分。